「人生会議」しとこ、という小籔千豊さんのポスターが、公表されてすぐに発送中止となり、厚生労働省のサイトからも削除されてしまいました。
なぜ? というシンプルな疑問の答えは、患者団体や遺族から抗議が殺到したから。
では「人生会議」とはそもそも何? という疑問も湧きます。
人生会議のポスターを作成した厚生労働省の狙いは何だったのでしょうか?
人生会議とACP(アドバンス・ケア・プランニング)は同じこと? そして、作られたポスターはどうなる?(←これが重要ではありませんが)
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公表されたのに消えてしまった「人生会議」のポスター
人生会議のポスターは厚生労働省が2019年11月25日に公表しました。
しかし小籔千豊さんを起用し、大きく顔がアップされたポスターは、11月26日には、すでに厚労省のサイトからも消えてしまいました。
(↑厚労省のポスターが見えなくなったページ)
なぜ、こんな急展開になったのかというと、先述のように非難が殺到したからです。たしかにこのポスターを仮に、先般、ご家族を病気で亡くしたばかりのご家族、遺族が見たら、何とも切ない諸々の事象が思い出されるかもしれません。
また、現在、闘病中の患者さん本人や、その家族が見たら、何とも重い気持ちになることは、想像できてしまいます。
そのような批判に応えて、厚生労働省が放送も中止し、ポスターのホームペーシへの掲載も、そして地方自治体への発送も中止したというのは、なるほどの展開といって良いかもしれません。
さらに突っ込んで追求する人がいたら・・なぜ、このような反応を予想しなかったのか!?という話かもしれません。
現在、厚労省では上記のURLの代わり(?)に、以下のページを開設しています。
タイトルは 「人生会議」してみませんか です。
これまでの経緯や、今回ポスターを取りやめた経緯などについて書かれています。
人生会議(ACP)とは何か?迷いながらも進むということ
上の画像ページにもありますが、ACPと言われても、アルファベット頭文字の名称が多い昨今ということもあり、中身がピンと来ない名前のような気がします。それで厚労省では
「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」に決定しました」
ということで、その決定というのは、2018年11月30日のことでした。今回の件の1年ほど前に、「人生会議」が生まれたことになります。
ちなみにその時の選定委員の一人だったのが、小籔千豊さんでした。ポスターに起用されたことは、適任というか自然の流れだったのではないでしょうか?
厚労省のサイトで選定委員の言葉が紹介されていましたが、その一人である紅谷浩之さんは以下のように語っています。
「決めなくてもいいのでたくさん話をすることが大切だと思います。
あなたのことを知っているみんなで話しながら、迷いながら進んでいくこと、結論を話すのではなく過程が大切です。
それが人生会議だと思います。」
たしかに結論だけでなく、話し合うことで本人の気持ちとその周囲の人たちの気持ちとが・・・。そこは単純にうまくまとまるという話ではないとしても、明らかにすべきことが明らかになり、避けられない課題も見えてくるものでしょう。
批判を恐れて取りやめ、それで良いのか・・
単純に今回の経緯を振り返ると、厚労省がポスターを作った。批判があって取りやめた。という話ですが、その経緯自体にも、やはり賛否両論があります。
簡単に(?)取りやめたことへ批判が文春での山本一郎さんの記事でした。
いろんな人が簡単にいちゃもんをつけた結果、その告知や啓蒙の内容や手法がどんどん無難で穏便で誰からも批判されないように作られるようになった結果が、誰から見ても何も意味を感じられない、でも頼まれた業務はしている感だけはあるお役所仕事が敗戦処理のように残っているのではないかと思うんですよね。
むしろ、薄っぺらいとまで批判された小籔さんはブチ切れるべきだと思います。
俺、ポスターの中だけど死にかけてるんだぞ。お前ら、俺が死にかけてるポスターを見て薄っぺらいとは何事か。
クレームをつけてきた奴は百年後に無事心停止しろぐらいの文句を言ってよいのではないかと感じるんですけれども、そのままそっとポスターもPR動画もなくなってしまうのでしょうか。
(11月28日文春オンラインより 引用元:https://bunshun.jp/articles/-/16203?page=2)
ではどんなポスターならいいのか。山本氏は献血の例も併せて「そりゃタレントがコスプレでもして無難なコピーでポスター作ればいいんでしょうけれども」と語っています。
無難だけど、誰の心にも刺さらないポスターだとしたら、何のためのもの? となるでしょう。
ただこの問題は人生会議そのものというより、表現方法の選択についての論議にもなりますから。
また見る人が国民というじつに不特定多数の人を想定する状況ですから、簡単に「正解」には行き着かないように見えます。
ところで人生会議は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称ということで、厚労省のチラシにも11月30日は、『いい看取り・看取られ』とあります。
そして以下の文言も・・
もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取組を「 人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」と呼びます。
あなたの心身の状態に応じて、かかりつけ医等からあなたや家族等へ適切な情報の提供と説明がなされることが重要です。
75%の人は知らないACP
厚労省の調査「人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」に寄ると、ACPを知らない一般国民は75.5%とのこと。
そして知らないため賛否表明しようがないけれど、ACPに賛成64.9%。賛成するか「わからない」という反応も30%を超えていました。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の代わりに「人生会議」という言い方の普及を目的とした啓蒙活動ポスターだそうですが、傷ついたのはどの部分なんでしょうか?文章?ヴィジュアル? https://t.co/bULUnXHpZ1
— 山本 左近 (@SakonYamamoto) November 26, 2019
アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning )とは・・
病気になった患者が、本人だけでなく、家族や、介護提供者や医療従事者たちとともに、現状だけでなく、将来に、その患者が自分の意思を決定する力が低下したときに備えて、あらかじめ話し合っておくこと。
話し合うことというのは、終末期も含めてその後の医療や介護について話し合うことや、さらに患者が自らの意思決定が不可能になったときに、代わりに意思決定をする人は誰か等々を決めておくプロセス・・・
なかなか重たい内容になります。
重たいからこそ、反響があるという当然の事象が起きているということでしょう。
正直なところ、厚労省の担当者さん、お疲れさま・・という気持ちにもなります。ある意味炎上することで世の中に認知されているようなここ数日の動きですから。
アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning )において、文書を作成しておくとか、その文書はどのくらいの効力を持つか等々ーー テーマはまだまだありますが、
今回は、 「人生会議」のポスター作成した厚生労働省が、そのポスターの使用を中止したというテーマでした。